「エンディングノート『わたしの想い』(探究社)書き方講座」 [243回 H27/10/8]
講師:宮南靖 氏 浄土真宗本願寺派 正法寺門徒
講師プロフィール:
浄土真宗本願寺派 仏教壮年会 東京教区 理事長
大阪出身 工学部を卒業後、造船会社、家電営業を経て大手仏壇店の葬儀・仏事相談センターに勤務
 関東各地でお客様の通夜・葬儀に立ち会う

「終活」ブームでエンディングノートが60種以上も出版されています。
特に子供に迷惑をかけたくない志向の方に好評です。でもこのノート『わたしの想い』を出版された釋悠水師は「ちょと待って!ちょと待って!」と言っておられるようです。
受講いただく皆様に一冊ずつ進呈します。ぜひ書きながら考えてみましょう。

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<講演録>

今日は兵庫県の浄土真宗本願寺派報恩寺の牧野副住職のお書きになったエンディングノート『わたしの想い』と、私が用意しました『エンディングノートの書き方講座』のレジュメを使いながらお話をします。
まずこのノートの最初のページをめくっていただくと、『〜はじめに〜』というのがあります。ここだけはこのノートを使ってしっかりと、立ち位置をはっきりしておきたいですね。『はじめに如来さまの願い、私の想い』これがこのノートのタイトルです。
『ご法事・お仏壇・仏法(阿弥陀如来さまの救い)を家族や次世代に受け継いでほしい、そんな想いを持つあなたの為の書き込み式ノートです。』ということです。今日お集まりの皆さまの中にはいろんなご宗旨の方がおいでになるだろうし、もしかしたら無宗教の方もおいでになるかもしれませんが、これはちょっと浄土真宗本願寺派の先生の書かれたノートだということで、こういう書き出しです。『お参りを通して肌身で感じることですが、一軒のお宅の中でご法事・お仏壇・仏法を大切にするお方がおられても、次世代に継承されないことがしばしばあります。この傾向は年を追うごとに強まっており、この流れに一石を投じたいという思いでこのノートを作成しました。』と、こう書いてありますね。結局このノートで伝えていきたいことは、人様それぞれあるでしょうけれども、浄土真宗的に言うと、「みのり」。もっと広く言うと、お釈迦様の教えをちゃんと引き継いでいきましょうということがこの中に流れていると、こういうことです。
もう少し読みますけれども、『他のいわゆるエンディングノートでは自分史、治療方法、葬儀準備などに紙面が多くが割かれています。このノートでもこの内容は踏襲していますが、最大の特徴はご法事・お仏壇・仏法の継承という点に重きを置いていることです。』と書いてあります。そのことを、今から私なりの捉え方でもってお話をしたいと思うわけでございます。それではレジュメを作ってきましたので、これに沿ってお話ししたいと思います。

まず表紙を見ていただきたいんですけれども、このノートはだいたい5つくらいのブロックに分かれています。まず『序文』というところがあって、このノートの目的や書き方、お仏壇についてや、宣言について書かれています。
その次に『自分で棚卸』っていう言葉を使っていますけれども、出生から家系図、自分が歩いてきた流れ、ライフワークなどを書いています。
その次の『専門家に問う』は、『病と老い』『死と老後』ということで、いわゆる世の中で言うエンディングセミナーで、とっても力を入れて時間を割いてしゃべるところですね。
それから4番目のブロックが、『仏法に問う』というところです。これが先ほど本編のノートでお話ししました、「お仏壇・ご法事・仏法」というこのノートならではのところで、ここがまあミソになっているブロックです。
それから最後にもう一度『専門家に問う』と書きましたけれど、これはどちらかというとお金にまつわるところですね。

それではちょっとページをめくってください。レジュメに沿って話していきます。
まず最初に『はじめに』としてこのノートの目的ということを書いています。紀伊国屋さんのサイトを見ると、エンディングノートって74種類、今日現在掲載されています。また、こういうセミナーはですね、だいたい得意とされてるのがお葬儀社さん。ですからお葬儀のところが話の中心になっています。もちろん営業目的ですから、話を聞いていただいて、出口で契約するみたいな、そういうのが多いんじゃないかと思います。金融業の方もこういうセミナーわりと得意で、行政書士の先生や司法書士の先生を呼んできて、セミナーをしまして、安心して保険をとか投資信託をとか、そんなのもあると思うんですね。
営業目的の場合でもだいたいエンディングノートのパターンは決まっていて、到達点を先に決めましょうというんですね。到達点を決めることで、今からそこまでを元気に生きましょうっていうのがエンディングノートの大きな目的です。
その中で書かれているのは、整理をしましょうということ。必要なものと不要なものを整理しましょう。そして整理をした中で選びたいところをきっちり選んでいきましょうってなことが多いんです。けれども、このノートは浄土真宗版なんですね。浄土真宗というのは、捨てることをお勧めしない教えなんですね。良いとか悪いとかじゃないですよ。親鸞聖人の浄土真宗っていうのは捨てるということは言わない。自分で持ってるもの、もっと言えばちょっと醜いものも、それこそあなたそのものでしょ。だからそれを認めましょうっていうところがあるので、浄土真宗のエンディングノートは捨てさせないトーンがある。これは宗旨の特徴でもあるっていうことですね。
その次の『このノートの書き方』っていうところ、エンディングノートはだいたいパターンが決まってるんです。
まず、「持ちモノ」。あなた自身の持ち物を書きましょう。それからもう一つは、「あなた自身」。あなた自身を書きましょう。そして、それぞれ「目に見えるもの」、「目に見えないもの」。この2×2の4つくらいのことを書きましょうっていうんですね、エンディングノートは。
まず『自分の持ちモノやコト』一番わかりやすいのがですね、「財産」。これはお金という意味での財産。これを書きましょうっていうわけです。現金や預貯金・有価証券、それから不動産。それから著作権や特許権などの権利もあります。要するにこれは金銭的な物差しで計れるものを書きましょうっていうんです。実はここはですね、遺言(ゆいごん)の領域なんです。ここだけが遺言の領域なんです。遺言(いごん)って言った方がいいよっていうふうに法律の先生はおっしゃるんですけれども。逆に言うと、遺言には、今からお話しする他のところは書いても意味がないんです。ここだけが法的に認められて、あなたの書いた遺言の中でこの領域だけが法的に自分たちが残していく子どもや奥さんという相続人に対して法的に約束できる部分なんです。それがここです。
「モノサシで量ることが出来ない財産」これが、あなたの持ち物のなかで法的には約束できないけれども、心を伝えるという意味で遺していけるもので、その人の生きてきた歴史とか、あるいは価値観とか、思いとか、そういうものがたくさんあります。

<こちらでの公開はここまでです。全体の講演テープをご希望の方は仏教情報センターまでお申込下さい(千円送料込)>

(2015/10/8「いのちを見つめる集い」より)

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